荘子紹介(三分間スピーチ)

ちょうど一年前、会社の朝礼のスピーチで述べようとしたことをまとめなおしてみる。残念ながら、ちょうど発表しようとしたときにスピーチが廃止され、実際に発表することはなかったのだが。

 

最近、私は中国古代の思想家荘子に傾倒している。彼は中国の春秋戦国時代に生まれた思想家:諸子百家の一人で、道家にカテゴライズされる。

彼の問題意識は、悲惨な戦国時代にあっても人間はどのように自由に生きられるかという点にあった。私も仕事で不自由を感じないときはないので、不自由の質や程度に相違はあれ、参考にできるところがあるかもしれないと思い、読むに至った。

 

では、彼の思想について紹介する。

まず彼は真の実在として道:万物がそれによって存在し、変化する道理を措定する。これは全事象に遍在する原理である。対して、我々が日常的にとらわれる諸々の知覚・認識・善悪や感情などは、道の現象に過ぎず、各々の主観によって異なって映る。

彼は、前者の「道」について自覚を持ち、それと一体化した自己を持つことを説いた。そうすることで、後者に属する諸々の負の感情、争いを生み出す善悪の対立などの表面的な現象から自由になり、後者にとらわれない主体性が発揮できると考えたためである。

しかし、彼はけっして超越的な道の世界に逃避しようとしたわけではなく、道に根差した強く柔軟な自己をもって、現実世界で精一杯生きることを欲した

彼の自由は、思い通りにできるといった意味の自由ではなく、精神の在り方に関する自由である。彼は、道理という必然を受け入れ、それに従う自己を持つことで、自らに由るという意味で自由になれたと言える。

 

彼の独特の世界観には理解や同意をしがたい部分がある。しかし、自分の抱える仕事上の悩みや苦痛を相対化し、深刻にとらえすぎないことで、かえって主体的に困難を克服できるのではないかというヒントは得ることができた。